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2007年4月26日 (木)

145: オール・ザ・キングスメン(2006)

王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
ハンプティを元には戻せない

All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.Al_301Al_001

英題: ALL THE KING'S MEN

監督・脚本:スティーヴン・ザイリアン
原作:ロバート・ペン・ウォーレン
撮影:パヴェル・エデルマン
編集:ウェイン・ワーマン
音楽:ジェームズ・ホーナー

キャスト:ショーン・ペン  ジュード・ロウ  アンソニー・ホプキンス  マーク・ラファロ  ケイト・ウィンスレット  パトリシア・クラークソン  ジェームズ・ガンドルフィーニ  ジャッキー・アール・ヘイリー  キャシー・ベイカー

製作年: 2006年
製作国: アメリカ
日本公開: 2007年4月7日
上映時間: 2時間28分

理想主義を掲げ公務員から知事にまで登りつめた政治家と貴族階級出身のジャーナリストが織りなす政治ドラマ。ロバート・ペン・ウォーレンの実話小説 を基に、『シンドラーのリスト』でアカデミー脚色賞を受賞したスティーヴン・ゼイリアン監督が1949年に映画化された同名作をリメイク。

公式HP

■■■さくら70点 劇場鑑賞(レデイースデイ TOHOシネマズ)

思った以上に、政治家ウィリー・スターク(ショーン・ペン)とジャーナリストのジャック・バーデン(ジュード・ロウ)が魅力的に表現されていて面白 かった。理想と現実、善と悪、それらは対立して別々に存在するのではなく、表裏一体となって混然と存在しているのが、政治を通して描かれていた。

 

Al_007ウィリー・スタークは、映画が進むにつれふてぶてしさを増していく。肩を揺らしながら演説する姿が、だんだんと恐ろしくなってくる。彼の言葉は、ウィリー・スターク自身が、行動し経験を積み、実感したことから生まれている。彼に憑いたモノは一体なんだったのか・・・・・?

都会の金持ちは助けてはくれない。
田舎者は自分で目覚めるしかないんだ。

善は悪からも生まれる。
善は形づくられるんだ。

理念は“善”でも手段が“悪”。汚職にまみれて作った橋や道路、建築物は人々の役に立っている。汚職にまみれなければ、それは実現しなかったのか。少なくとも彼は、そう考えたからそうしたのだが。彼は何のために、公共事業を行ったのか。貧しい人々のためなのか、自分の支持を上げさせるためなのか・・・そうやって考えることが無意味なのか・・・・・。

彼の政治的な場面がもっと描き込まれるのかと思っていたけど、思ったよりそれが少なくて、彼の人間性を表すシーンが多かった。あたしはそれで可だけど、もっと派手な政治ドラマを期待した人は、物足りないかもしれない。

 

Al_303ジュード・ロウのあの明るい色の瞳が、とっても魅力的に映っていた。『ホリデイ』とは正反対の全く違うキャラクターだけど、ジャック・バーデン役しっくりくる。さして派手な演技では無かったと思うのだが、印象的な表情を見せていた。

真実を知らなければ、傷つかないでいられる。

こ の手の男、といってはあれだけど、特権階級の恩恵にあずかって育ちながらそこに居心地の悪さも感じ、理想に燃えながらもそれは信念とまでは言えず、ロマン チストな面を持ちながらも自分は落ちたと自嘲気味でもある、でも、現実に順応していく・・・・好感は持てないけど、個人的に好みであります(笑)。

Al_304 アダム・スタントン(マーク・ラファロ)、 ジャックと同じように特権階級の育ちで、尚且つ、父親が元判事である。この映画で、彼にもジャックと同じようなことが起こる・・・知事に、妹に・・・がし かし、彼はジャックのように順応することが出来ない。それが彼の“もうひとつの弱さ”なのだと、あたしは思うのだが。彼は、“自身が思っている以上に善 人”だったというわけだ。

 

Al_302アン・スタントン(ケイト・ウィンスレット)行 動で、ちょっと驚いたことがある。ああいう話をぶっちゃけるトコロ、まぁ、状況を説明するために必要だったとしても、あそこで殴ったコト・・・・・当然と いえば当然だけど。自尊心の強さを感じた。この時、ジャックが傷つけたのは、彼女の恋心ではなく、自尊心だったのだと気が付いた。

 

Louisianastateseal 各所に意味深なモノや場面が使われていた。最たるのが終わりの画で、とても象徴的だった。

でも、見終えてあたしが思い浮かぶのは、ウィリー・スターク、ジャック・バーデン二人が、顎を引き上目使いに人を見る目だった。二人は、容貌も年齢 もその背景も何もかも違うのに、時折見せるその表情は、何故か似ていたような気がする・・・・・。あたしはこの映画で、政治ドラマとか人間模様とか善悪と かそういったことよりも、淡々とではないにせよ二人が現実に順応していくその様子が、ただただ面白かった。

 
   

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知らなくても楽しめるけど、知ってるともっと楽しめる!  かも?・・・・・^^;  その1~8まであります。興味が持てそうなところだけでも読んでみてね。

 

その1【時代設定の変更】

モデルになった実在した政治家ヒューイ・ロングは1935年死亡、でも、映画のウィリー・スタークは1959年死亡になってた。つまり、世界大恐慌・ニューディール政策の時代から、冷戦時代に設定を変更してるってわけだ。撮影背景の都合なのかな(笑)?

時代背景が違っても同じってことか。仮に現代にしても、成り立つってことだ。

<アメリカ大統領>

実在したヒューイ・ロングの時代   /31代目  ハーバート・フーヴァー   1929-33年   共和党   /32代目  フランクリン・ルーズベルト   1933-45年   民主党

映画のウィリー・スタークの時代   /33代目  ハリー・トルーマン   1945-53年   民主党   /34代目  ドワイト・アイゼンハワー   1953-61年   共和党

 

その2【ウィリーの実在したモデル ヒューイ・ロング】

Al_0111927年に大雨によってミシシッピ川が氾濫し、ルイジアナ州に大きな被害を与え、この時行政は、白人は救済したが黒人は後回し・・・という人種差別的な措置をとり問題になった。ヒューイ・ロングはその洪水の後、1928年に立候補しルイジアナ州知事になった。

彼は、訪問販売員から身を起こし、弁護士になり民主党所属であり、急進的なポピュリズムで有名であった。1928年から1932年までルイジアナ州知事を務め、1932年から1935年まで上院議員であった。1932年の大統領選挙ではフランクリン・ルーズベルトの支援者だったが、のちに袂を分かち、自らが大統領になることを計画した。

1934年には“Every Man a King”というスローガンの下に、世界恐慌のために引き起こされた犯罪と貧困を抑制するために、“Share Our Wealth”と呼ばれる、所得再分配を評価する運動を作りあげた。ロングの社会改革は大きな人気を集めたが、彼の“富める者から貧しい者へ”という政策は社会主義的だといって、富裕層からの反発も大きかった。彼は独裁の傾向にあることを批判されていたし、貧困層のための政策資金を裏金で用意したことから、汚職にまみれた政治家だとされている。

1935年9月8日、バトンルージュのルイジアナ州議会議事堂で銃弾を浴び、2日後に死亡した。

*ポピュリズムは、カリスマ性があると見なされた為政者が大衆からの人気を集める ような政策を行い、一方で内外の危機を煽るなどして民衆を扇動するような政治手法を指す語。いわゆる主義・主張や政治思想というよりも、現実のある種の政 治のあり方を記述・分析する際に用いられることが多い。

日本語においては、人民主義、大衆主義、大衆迎合主義、民衆主義とも訳される。マスコミにおいては、衆愚政治という意味あいで用いられる事が多い。

なお、現在では極めて稀ではあるが、民衆が民衆本位に政治を動かす現象やそういった状況への希望が、ある特定の立場から、肯定的に「ポピュリズム」と表現されていた時期もあるため、文献解読の際には注意を要することもある。

 

その3【ヒューイ・ロングと音楽】

◇Louisiana 1927◇ 大きな被害をだした27年の洪水を扱っています。

◇Every Man A King◇  ヒューイ・ロング自作の選挙キャンペーン・ソングをカバー。映画でも自作の曲をラジオで流すシーンがあったね。

◇Kingfidh◇  ヒューイ・ロングのことを歌ってます。

Good Old Boys / Randy Newman ♪視聴  ランディ・ニューマン  ^^くりっく?

Al_006

 

その4【ヒューイ・ロングの弟の実話を基にした映画】

ブレイズ』 65才の政治家アール・ロングが、28才のストリッパーのブレイズ・スターと恋に落ち、政治と恋の両方をブレイズが書いた自伝を元に映画化した作品。アール・ロングはヒューイ・ロングの弟。

 

その5【ボタン・アコーディオン】

Al_010 地元で選挙演説をするウィリー・スタークのバックで、音楽を奏でる少年達が、「ボタン・アコーディオン」を演奏していた。日本だとcobaが演奏するよう なピアノ・アコーディオンが一般的だと思うけど、こういったボタン・アコーディオンがあるのを、藤田朋子が結婚したアコーディオン奏者の桑山哲也の演奏を 見て知った。

ルイジアナ州には、定住したフランス系移民・ケイジャンによって始められたダンス音楽、“ケイジャン ミュージック”がある。主にアコーディオンとフィドル(バイオリン)を入れたバンドで演奏され、歌詞はフランス語で歌われることが多い。。。。。らしい。

ニューオリンズ(ルイジアナ州)といえばジャズ・・・西洋音楽とアフリカ音楽の組み合わせにより発展した音楽・・・発祥の地だけど、そればかりじゃなくて、色んな音楽が混ざった独自の音楽があったんだね。

 

その6【マザーグースの童謡】

Al_009 Humpty Dumpty sat on a wall.
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.

ハンプティ・ダンプティが 塀の上
ハンプティ・ダンプティが おっこちた
王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
ハンプティを元には 戻せない

この童謡から発展して、“Humpty Dumpty”はアメリカの俗語で「落選確実の泡沫立候補者」の意味に用いられることもある。

 

その7【天災と人災】

1927年 ミシシッピ大洪水 2005年 ハリケーン・カトリーナ 、どちらもルイジアナに多大な被害を与え、行政の対応の拙さが問題になった。

大洪水の後で、ヒューイ・ロングはルイジアナ知事になっている。

ハリケーン・カトリーナの前にこの「オール・ザ・キングスメン」は撮影されているので、壊滅的な被害を被る前のルイジアナの姿が映し出されている。

 

その8【州議事堂】

Al_008 ヒューイ・ロングが建てたバトンルージュにある州議事堂は、アメリカの州議事堂で最も高層。高さ約150mで34階建て。彼は、この議事堂で暗殺された。

映画の撮影も、ここで行われた。

Al_701

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オール・ザ・キングスメン(1949)』 『ブレイズ』←ヒューイ・ロングの実弟の話。

Al_002Al_004

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コメント

わざわざ訂正依頼のコメントありがとうございました。映画をくわしくフォローされておられて勉強になりました。
 写真がきれいに映っていますね、それとココログは読み込みが速いですね、アメーバとはかなり差があるみたいです、ブログ移転しようかとも考えました。

投稿: asphalt | 2007年4月27日 (金) 00時07分

★こちらこそ、丁寧にコメントを残して頂きありがとうございます。

気に入った映画の背景を調べて楽しむのは、あたしの趣味ですが、少しお役に立ったようで嬉しいです。

アメブロは重いんですか?あたしはココログ・フリーですが、ウエルカムです(笑)

投稿: さくらスイッチ | 2007年4月27日 (金) 00時19分

我々は共和党でやってみて次は民主党でやってみた、そしてまた共和党でやってみて
今は民主党でやってみるところだ、だが残念な事に政権を取るとどちらの党も
たった一つの人民の緊急の必要、つまり誰もが極端に貧しかったり極端に裕福だったりしない為の
【富の再分配】を無視するのである。

バーベキューに行った事がある人?1人の男が10人のテーブルで9人分の食べ物を
一人で持ち去ってしまったとしたらどうでしょう?
全ての人がバランスよく食べるにはその男を連れ戻して彼の物で無い分を取り戻す。

投稿: | 2009年9月 6日 (日) 10時40分

『Monopoly Men』~Federal Reserve Fraud~

投稿: | 2009年9月 6日 (日) 12時51分

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