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2007年6月16日 (土)

171: うつせみ

空虚な心がひたひたと満たされてゆく
3iron002

原題: 空き家 / 3-IRON  

監督・脚本・編集・製作:キム・キドク
撮影監督:チャン・ソンベク
助監督:オク・ジンゴン
美術監督:チュ・ジンモ
衣装デザイナー:ク・ヘホン
メイクアップ:チョン・ジホ
音響:ジュン・ジヌク
音楽: SLVIAN
ラインプロデューサー:チャン・ソクビン
製作総指揮:鈴木径男 / チョ・ヨンベ

キャスト: イ・スンヨン(ソナ)、 ジェヒ(テソク)、 クォン・ヒョゴ(ミンギュ)、 チュ・ジンモ(チョ刑事)、 チェ・ジョンホ(看守)、 イ・ジュソク(老 人の息子)、 イ・ミスク(老人の息子の嫁)、 ムン・ソンヒョク(ソンヒョウ)、 パク・チア(チア)、 チャン・ジェヨン(ヒョンス)、 リ・ダヘ (チウン)、 キム・ハン(アトリエの男)、 パク・セジン(アトリエの女)、 パク・トンジン(イ刑事)、 イ・ジョンソプ(家族旅行から戻った男)、  イ・ウイス(家族旅行から戻った女)、 リュ・ジョンファ(家族旅行から戻った少年)、 カン・ソンフン(ゴルフボールに当たった少女の恋人) 

上映時間: 1時間28分
製作年: 2004年
製作国: 韓国/日本
日本公開: 2006年3月4日
レンタル開始日 : 2006-08-25 

はかなく美しい夢のような時間。空虚な心がひたひたと満たされてゆく。この世は夢か現か、幻か……。ひとは誰しも孤独を抱え、ぽっかりした虚空を埋める誰かを待ち続ける。

夫によって家に閉じ込められた女ソナ。抜け殻のように生きるソナのもとにある日、留守宅を転々とするミステリアスな青年テソクが現れる。ふたりの秘 密の旅が始まった。言葉をいっさい交わすことなく、ふたつの孤独な魂がそっと寄り添う。旅の最果てにようやく、待ち焦がれた至福の時間が訪れる。それは一 瞬の夢のようにはかなく幻想的で空虚な心をあたたかく包み、満たしていった。

◆◆◆さくら 75 80点 レンタルDVD

キム・ギドク監督ってこの映画で、監督・脚本・編集・製作をやってるみたいなんだけど、見終えた後、あたしは確認しちゃいましたよ、何回も。監督は ムロン脚本もやってるんですよね?、で、男性なんですよね?、あれ?本当に?、あたしの勘違いだったかな、キム・ギドクって女性だったっけ?、脚本だけは 別の女性だったのかな?・・・って。

映画の視線・・・全てが現実なのか、どこまでが現実でどこからが夢(妄想)なのか、全てが夢(妄想)なのか・・・このソナの視線って、とっても生理 的なものに感じるのよねぇ、感覚的というか、これってオトコに組み立てられる感性じゃないと想うんだけどなぁ。。。オトコが作ったというのが、あたしには 俄かに信じられなかったよ。そう感じるあたしって、世界が狭いんだなぁ・・・・・う~ん、スゴイ、スゴイよこのオトコ!!

以下、微妙にネタバレあり。 。。。

◇ 醒めない夢 ◇

ソナがテソクに惹かれる心が解ったし、そうやってソナの視線でこの映画を感じるのは、とても不思議な感覚だった。女が男に醒めるのも、好きになるの も、理屈じゃない・・・偶然の一瞬の積み重ねが、どうしようもなく気持ちを持っていってしまう。 。。。そんな感じ(ってどんな感じ!?・笑)。そんな空 気感があるのが前半。 ^^

で、後半!この辺りから、見る人によって受け止め方が違うんじゃないかな? この後半が面白いのだ。映画の中でのリアルと捕らえた人もいるだろうけ ど、あたしは後半に入ってから、この映画って最初から虚実が入り混じっていたんだと想い直した。それは、現実にしては、ソナにとってあまりにも都合が良す ぎるからだ。で、細部がリアルなようでいて、なんか虚構っぽく感じてたのは、これが映画で舞台が韓国だったからじゃなくて、妄想だったからじゃないかって 想えてきたのだ。二人の台詞が無いのが、余計にそんな雰囲気を醸し出しているように感じられ・・・ソナは、逃げ出せない辛い現実から、自分の世界に入り込 んでしまったように思えた。 。。。もちろん、あたしがそう感じただけで、あきらかな明示があったわけではないです。それこそが、あたしの妄想かもしれな いです。はい。^^

この映画の感覚が、淡々とそして粛々と時に緊張感を伴って、あたしの体と心に染み渡るのを感じた。

あ~~、文字にすると陳腐だ!

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追記: ◇ 象徴として もうひとつの物語 ◇

『うつせみ』は、夫の執着心から自由を奪われ、果てにはDVも受けている、夫の援助を受けている裕福ではない実家、美しく優しいけど弱い女性ソナ。 そんなソナにとっての現実を描いた、虚実が入り混じった世界だったと感じた。ソナの視線や感覚その表現も含めて、あたしは気に入った。

テ ソクの存在からは、人や社会との関わりを絶ってしまった若者の、孤独さが浮かび上がる。自分の殻に閉じこもって社会に馴染もうとしない、その態度を改めら れないテソク・・・。夫とソナの存在からは、家庭内なので世間に理解されにくい問題(DV)の、悲しさと深刻さが浮かび上がる。自分の行いの理不尽さを認 められない夫、そんな夫のもとから抜け出せず自分の世界に入り込んでしまったソナ・・・。

「うつせみの世界」って、一見すると美しくあたかもハッピーエンドのように描いてみせているけど、そうじゃないと思う。ラストシーンでは、監督の視線にチョット皮肉っぽいものを感じてしまった。誰一人として自分の態度を改められなかった末の、究極の結末なのだから。

そう感じるあたしの視線が、穿ち過ぎなのかもしれませんが・・・(苦笑)。

見終えた直後は、男性のキム・ギドクがこの「うつせみの世界」を描いたという事が信じられなかったけど、今は、男性だからこそ「うつせみの世界」を映画化したいと、そう考えることが出来たのかもしれないと思ってる。   

 

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3iron004_1キム・ギドク監督は、自身が手がけた映画『サマリア』『うつせみ』で、2004年にそれぞれベルリン映画祭とヴェネチア映画祭の監督賞を受賞するなど、ヨーロッパ映画界から絶賛されたが、韓国ではよい評価を得られなかった。
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あたしはキム・ギドクって、もっと理解が難しい閉鎖的な感性を持ってると思い込んでいたので、この「うつせみ」が想ってたのと全然違って、今更なが らビックリした。韓国では何が不評をかう原因なのだろうか?映画を見た今となっては、不思議で仕方が無い。あたしが不思議に思うのが変なのかな?それとも 「うつせみ」以外も見てみれば、不評なのが何故かが分るのかな?

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コメント

キム・ギドク 引退宣言!?


「韓国映画界の異端児」キム・ギドク監督が引退宣言!?
キム・ギドク監督「自分の映画はゴミのようなもの・・・」
http://www.chosunonline.com/article/20060822000031

「全員が隠したがる恥部をわざわざ誇張して表現した自分の映画を情けなく思う。」

絶対の愛(2006)

・ 弓(2005)

・ うつせみ(2004)

・ サマリア(2004)

・ 悪い男

・ 春夏秋冬そして春(2003)

とくに、「春夏秋冬そして春」は、
良かった。
引退表明は、デモストレーション?


・・・

「大日本人」
コメントありがとうございます。
こんなに反応をいただいたのは
初めてです。

>次作があるなら
>「‘松本人志ファンじゃない映画ファン’からの
>作品としての評価」
>も勝ち取って貰いたいですね。

次作は、あるでしょう。
‘松本人志ファンじゃない映画ファン’は、
もう来ないかもしれないが、
15億円近いヒット作、
ヨシモトは、二本目の映画を作らせます。
それがヨシモト?です。

P.S

先日、レンタルDVD屋に行くと
「ごっつえー感じ」のDVDを流していました。

ちょうど、「とかげのおっさん」のシーンで、
ついつい、20分くらい見てしまった。

「大日本人」を観る人は、
「ごっつえー感じ」のDVDで、まっちゃんの
あの“間”に慣れておいたほうがいいかもしれない。

投稿: hito2km | 2007年6月17日 (日) 12時52分


あたしもこの記事、読みました。で、この発言と彼の経歴(軍人・パリ留学)も合わせて、なんとなくだけど、キム・ギドク監督がこの『うつせみの世界』を撮れたのが、少し分ったような気がしました。

彼はいい歳した大人の男性なんだけど、ある面では繊細で擦れてないロマンチストで、思い込みが激しく感情の振れ幅が大きい性格で、彼をそうせしめているのは、彼の広く閉じた世界観だろうと想いました。

  
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・2006.07.27 「グエムル」韓国公開
・2006.08.10 「絶対の愛」韓国公開

・2006.08.17 MBC100分討論 
・2006.08.21 「キム・ギドクの謝罪文」という題でEメールを送った
・2006.08.22 この記事が書かれた日付

・2007.春  東京で、過去の作品の数々を公開した「スーパー・ギドク・マンダラ」が行われ盛況のうちに終わる。名古屋でもずっと小規模でしたが「ギドク・マンダラ」として過去の作品を公開してました。(今にして思えば、行かなかったのを後悔してます。)
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この2006年夏の騒動で、情けなく思ったのも、恥ずかしく思ったのも本当で、引退するという言葉は、ある意味「キム・ギドクが観客を見限る」と同義だと感じました。この‘デモンストレーション’の「自己反省」は「韓国映画と観客」に対する嫌味で、「韓国映画文化に対する反発」であると思ってます。

・ 「当てこすりのような行きすぎた表現で、・・中略・・、映画界の先輩としてまったく面目ない」、これは本心だと思う。

・ 「以前、俳優のアン・ソンギさんに、・・中略・・、今考えてみると自分の映画観と思考に深刻な意識障害的な面があることを悟った」、これも本当に気付き悟ったのだと思う。

・ 「全員が隠したがる恥部をわざわざ誇張して表現した自分の映画を情けなく思う。美味しかった料理を、その後排泄物として出す際に、それを避けようとする人々の心情をまったく理解しないで映画を作ってきた。自分が本当に恥ずかしい」、これは痛烈な嫌味じゃないでしょうか。


引退はないでしょうね。 。。。もう次作を撮ってたりして(笑)。

彼の作品は「春夏秋冬そして春」も含めて、ゆっくりとだけど見ていきたいと思ってます。そうする中で、キム・ギドク監督に対するイメージが、また変わってくるかもしれません。

   
  
hito12kmさんのブログ、チェックしてるので、コメのレスも読ませて頂いてます ^^v。「ごっつえー感じ」見てみます ♪

投稿: さくらスイッチ | 2007年6月17日 (日) 16時40分

TBありがとう。
監督は、ソナを満足させられない夫が、ソナのためにみさせた夢かもしれないよ、などと観客を煙に巻いています(笑)

投稿: kimion20002000 | 2008年3月29日 (土) 03時56分

★コメント、ありがとうございます。

そうなんですね、監督はそう言ってたんですね。

観客が見て、想像して、楽しめばいいんですよね。^^♪

投稿: さくらスイッチ | 2008年3月30日 (日) 11時51分

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» 映画『うつせみ』 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:空き家/3-Iron 「うつせみの、命を惜しみ、波に濡れ、伊良虞の島の、玉藻刈り食む」・・絶望の淵にある深い孤独と心の絆、純愛と呼ぶには余りに空虚で哀しみが溢れてる・・ テソク(ジェヒ)はバイクでなにやら戸別訪問してドアに貼紙してまわってる。と思えば、夜に... [続きを読む]

受信: 2007年6月17日 (日) 12時15分

» mini review 06174「うつせみ」★★★★★★★☆☆☆ [サーカスな日々]
『魚と寝る女』や『悪い男』の鬼才、キム・キドク監督による幻想的な愛のファンタジー。ミステリアスな青年を演じるのは、現在韓国で最も注目される若手俳優のジェヒ。彼は劇中一言もせりふがないにも関わらず、その美貌と眼力で観客を惹き付ける。孤独な人妻役には元ミスコリアのイ・スンヨン。寂しさを抱える2人の男女の運命的な出会いは衝撃的。監督は2004年のベルリン映画祭で『サマリア』、ヴェネチア映画祭では本作で最優秀監督賞に輝くという偉業を成し遂げた。[もっと詳しく] もしかしたらギドクは、日本で映画製作をする... [続きを読む]

受信: 2008年3月29日 (土) 03時52分

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