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2007年9月29日 (土)

213: 酔いどれ詩人になるまえに

DON'T TRY

Factotum01

英題 : FACTOTUM

監督・制作・共同脚本 : ベント・ハーメル
製作・共同脚本 : ジム・スターク
原作 : チャールズ・ブコウスキー
撮影監督 : ジョン・クリスティアン・ローゼンルンド
編集 : パル・ジェンゲンバッハ

キャスト : マット・ディロン リリ・テイラー マリサ・トメイ フィッシャー・スティーヴンス ディディエ・フラマン エイドリアン・シェリー カレン・ヤング

製作 : 2005年 アメリカ/ノルウェー
日本公開 : 2007年8月18日
上映時間 : 1時間34分

酒と女とギャンブルに明け暮れる自称“詩人”のヘンリー・チナスキーは、売れない詩や小説を出版社に送り続けながら、その場しのぎの仕事を渡り歩いてい る。タクシーの運転手、缶詰工場、清掃人…。何をやっても続かないダメダメな酔っぱらい。優しかった恋人ジャンにも捨てられ、どうしようもないことだらけ のみじめで冴えない人生。それでも、チナスキーにはいつだって少しばかりのユーモアと一杯の酒がある。湧き上がる「言葉」がある・・・・・

*原作の『FACTOTUM』は、その作者であるブコウスキー20代の無頼の日々を綴った秀作。作者の分身である主人公ヘンリー・チナスキーの父親との葛藤、酒、女性関係など、20代のまだまだ自信のない青年のさ迷う姿を描いた作品である。

 

◆◆◆さくら 77点 (劇場鑑賞/ゴールドシアター)

チャールズ・ブコウスキーのWikiにある略歴を読んでから観に行った。その略歴から分かったことは、世に知られる主な作品は49歳以降に発表され た作品で、それまでは作家として生活できていないということだ。つまり、映画の原作である『FACTOTUM』で描かれている20代の後もまだ20年ほど は浮かばれない生活をしているという事で、彼が30代でも40代でもその無頼な生活ぶりは大差無さそうだなって思った。あと彼の20代というのが、 1940年代という第二次世界大戦の前後という時期で、思ったより古い時代が舞台なんだというのがちょっと意外だった。

そんな事を頭の片隅においてこの映画観た。


Factotum02
映画のヘンリー・チナスキー(マット・ディロン)は、特に年齢を特定できるシーンは無かったけど、原作どおりの20代では無さそうだし(マット・ ディロンの実年齢が41歳ということは置いておいたとしても、30代くらいの設定か?)、時代背景を伺わせるシーンも無かった(強いて言えばファッション や車にはあった?)のが、逆に時代を超えた独特の雰囲気を醸し出していた。

飲む・打つ・女!というだけのどうしようもない生活を送りながらも、週に3~4本の短編を書くことだけは止めない、というか止められないという生活 を送るヘンリー・チナスキーの様子が、ただ淡々と描かれている。そのダメダメ男振りは、ハンパ無い。だけど彼は、モノを書き続けるという一点にだけ置いて 凡人とは違っている。その書く事だけが宿命とでもいうような生き様が、後の出世を知っているからこそだけど、映画を見ている内にどんどん味わい深く魅力的 に見えてきたから不思議だ。本来なら嫌悪感を抱いてもおかしくない彼の生き様に、いつの間にか羨望の眼差しを向け始め、散りばめられた彼の言葉が「珠玉の 言葉」に感じられてくる。そんな自分の変化に苦笑いさせられた。

 

死して尚、その作品が輝きを保ち続けるということが、稀にだけどある。そんな稀有な人たちの一人であるチャールズ・ブコウスキーの若き頃(でもない?)だと思うと、映画を見た後にも、改めて何とも言えない感慨に浸ってしまった。

この後まだかなり長い間、このダメダメ生活状態が続くんだよなぁ、それでも書き続けるって凄すぎる。そんだけ書き続けていればそりゃ文章力も身に付 くだろうし、無頼な生活で色んな人生を経験すればネタも尽きないだろうしね(笑)。世間の物差しからしたら物凄いダメ男なんだけど、本人の物差しからした ら物凄く頑張っている。(週に3~4本もの短編を書いて、そしてそれを出版社に送るなんて、並大抵の努力じゃ無い!)・・・といっても彼の「頑張り」は、 一生懸命とか無理をするという感じとは無縁なんだけどね。大抵の人は本人の物差しが存在しないか、あるいは世間の物差しに本人の物差しを合わせるんだけ ど、チャールズ・ブコウスキーはそんな事をしないんだよね。そしてある時を境にして、その世間の物差しと本人の物差しが逆転する時がやってくる。その時ま で本人の物差しで頑張れるっていうのは、“本物”だからだよね・・・。
Factotum03

 

下記はチャールズ・ブコウスキー略歴と、マット・ディロンのインタビュー抜粋。

 

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ヘンリー・チャールズ・ブコウスキー 略歴
Charlesbukowski


■1920年8月16日 誕生
ドイツ人の母、キャサリン・フェトとポーランド系ドイツ人の父、ヘンリー・チャールズ・ブコウスキー・シニアのあいだに、ドイツのアンデルナハで生まれ た。第一次世界大戦につづくドイツの経済崩壊ののち、一家は1923年にアメリカ合衆国のメリーランド州ボルチモアに移住した。その後一家はカリフォルニ ア州ロサンゼルスへと転居する。ブコウスキーの幼年時代、 父親はしばしば失業状態にあり、ブコウスキーによれば、父親から虐待を受けていたという。

■1939年 19歳
ロサンゼルス・ハイスクールを卒業したのち、ロサンゼルス・シティ・カレッジに入学し、芸術、ジャーナリズム、文学のコースを履修した。

■1944年 24歳
ニューヨークに移り住む。本格的な創作活動を始め、いくつかの短編が雑誌に掲載されるが、ブコウスキーは作家になる夢をあきらめる。その後は適当な仕事をし、安宿に泊まりながら国内を放浪してすごした。

■1945年 第二次世界大戦終結

■1955年 35歳
長年にわたる大量の飲酒がたたり、出血性の潰瘍で入院する。 退院したころからまた詩を書きはじめる。

■1957年 37歳
作家のバーバラ・フライと結婚したが、2年後に離婚。

■1960年頃~ 40歳
ロサンゼルスの郵便局で事務員として勤める。

■1964年 44歳
内縁の妻、フランシス・スミスとのあいだに、娘のマリナが生まれる。

■1969年 49歳
ブラック・スパロー・プレスのジョン・マーティンから「生涯毎月100ドル」という俸給を約束され、郵便局をやめる。その後の主要な作品のほとんどが、ブラック・スパロー社から出版されることになる。

■1975年 55歳
"Factotum" 『勝手に生きろ!』

■1994年3月9日 73歳
カリフォルニア州サンペドロで白血病により死去。遺作となる「パルプ」を完成したすぐ後のことであった。彼の墓には「DON'T TRY」と刻まれている。

 

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マット・ディロン インタビューの一部抜粋

Q:“ブ男”で有名なブコウスキーですが、デビュー当時から美形と言われていたあなたが“ブコウスキー”になった役作りの過程を教えてください。

 ブコウスキーと比べれば、ほとんどの男が美形だろ(笑)。体重を増やしたり、髪型も少し変えた。外見的なことではずいぶん努力したけど、彼になりきろう とは思っていなかったし、それは自分にはできない。彼の墓碑銘にもなっている「DON'T TRY」という言葉があって、つまり「頑張るな」っていうことだと思うんだけど、それはすべてを投げ出すということではないんだ。物質世界が彼を打ち負か しても、精神的には負けていなかった。頑張りはしないが、自分が信じたものに対しては絶対に妥協しなかった彼の考え方はかなりヒントになったね。

 

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ちなみに、映画『つめたく冷えた月』は、“異端の作家チャールズ・ブコウスキーの短編2作をミックスして映像化した風変わりなヒューマンドラマ”なんだけど、あたしは受け付けなかった。^^;

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