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2007年10月19日 (金)

219: 大統領暗殺

2007年10月19日 アメリカ中部時間20時13分-

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英題 : DEATH OF A PRESIDENT

監督/脚本 : ガブリエル・レンジ
脚本 : サイモン・フィンチ

製作 : 2006年 イギリス
日本公開 : 2007年10月6日
上映時間 : 1時間33分

ブッシュ大統領が暗殺されるという架空の事件を通し、9.11以降のアメリカを追うフェイク・ドキュメンタリー。

ストーリー:2007年10月19日、アメリカ中部時間20時13分、イラク戦争を起こしたジョージ・W・ブッシュ大統領が、シカゴでの演説の際に 大規模な反戦デモに遭遇。会場を去る際に何者かから2発の銃弾を受け、暗殺される。中東系の男が犯人と目される中、カメラはブッシュ大統領の周囲にいた人 々の証言をとらえていく。

◆◆◆さくら63点 劇場鑑賞(TOHOシネマズ)

この『大統領暗殺』は日本では映画として公開されているけど、製作国のイギリスでは、出資した公共テレビ局チャンネル4で2006年10月19日に放映されている。アメリカでは、当初公開予定映画館数を大幅に減らし公開されている。日本ではブッシュ大統領の顔がコラージュされたポスターに許可が下りず、差し替えられている。ま、そんなこんなで話題の映画だ。

この“フェイク・ドキュメンタリー”を撮ったガブリエル・レンジ監督(34)は、9.11以後にアメリカに住んでいた事があり、「この企画を思い付 いた発端は、米国の主要なメディアのイラク戦争の報道の仕方に疑問を感じたから。米国がイラクをシニカルに報じるとき、一連のテロ問題に触れるとき、メ ディアの報道はすごく偏ったものに感じられるのです。報道の在り方から、今回の問題意識が生まれたんです」と語っていて、「“今のアメリカのリアリティ” を描きたかった」とも言っている。そんな監督インタビュー記事を読むにつれ、最初はあまり興味が無かったんだけど観に行く気になった。Death_of_a_president_03

観た感想は、「あ~なるほど・・・」って感じ。「アメリカ愛国者法」などに代表される9.11以後のアメリカの現状が、「諸悪の根源だと思われてい るブッシュ大統領暗殺」によって、皮肉にもその不条理がより誇張されてしまう流れになってて、その無理の無い展開に「あ~・・・こうなるよねえ」って思っ た。ブッシュ政権はチェイニー副大統領の傀儡政権だなんて皮肉られる事があるくらいだから、ブッシュ大統領が暗殺されてチェイニーが大統領になったらこの 映画のようになるのはあきらかだろう。


ストーリー展開は、事件の映像と、関係者によるインタビューといったドキュメンタリー形式で展開されていく。ざっとした流れは・・・・

・2007年10月19日 アメリカ中部時間20時13分(そう今日なのだ!)ブッシュ大統領暗殺される。

・チェイニー副大統領が大統領になる。

・“容疑者”が拘束される。

チェイニー大統領は“核開発疑惑のある”シリアを敵対視している。(・・・シリアは石油産出国。)大統領を暗殺したのはシリア人テロリストだと好都合。

政府とメディアによって“シリア出身のムスリム(イスラム教徒)が犯人でテロリストだった”という構図が、結論ありきの後付「科学捜査」により作り上げられる。

本当の犯人がわかるが、“息子を「意味の無い戦争」で亡くしブッシュを恨んでいたイラク帰還兵”では、「役不足」な状況になっている。

ブッシュ大統領の行動&警備予定情報を流したのは誰なのか?映画では明確に語られていないが、「軍産複合体の意を受けた政府主犯説(ケネディ大統領暗殺の有力な一説でもある)」が暗示されている。つまり、ハリバートンと関係しているチェイニー・・・・・

愛国者法が恒久法になる。


あたしは、文字情報等で「“容疑者の電話や携帯電話の盗聴、Eメールの傍受を認め、インターネットの使用・通信記録をプロバイダーから入手できるよ うにし、テロ調査に関連するとみなせば個人情報の入手は裁判所の命令なしにできる”アメリカ愛国者法」をぼんやりと知ってはいたけど、これってかなり怖い よね?でもってこの映画では、この時限法が恒久法になっちゃう!?これってもはや警察国家だよね?対テロのはずが、対国民っていう構図にすり変わってる。・・・・・この映画は、9.11以後のアメリカがとった「対テロ」理由での国内外の行動に対する違和感と危機感を、アメリカの現状を誇張する形で目に見えるようにして警告している。その警告はメディアにも向けられている。

このフェイクドキュメンタリーを、昨年の10月にTVで見たイギリスの人は、どう感じたんだろうか?

今更そんなことを見せられても面白くないし(映画制作時から一年の時間が経過しているから・・・)、もっと意外性のある内容やグローバルな視点での 展開を期待したのに・・・って感想も多々あるみたいだ。でも、あたしは監督インタビューで興味を持って観に行ったので、そういった内容の映画では無いのを 知っていた事もあって、この映画を面白く感じる事が出来た。淡々と話すインタビューに垣間見られた、各々が感じる不条理に対する憤りみたいなものには考え させられたし、特に、元兵士に「価値観の崩壊・転換」が伺われるのも興味深かった。これらのインタビューはフェイクなんだけど、色んな要素を含んでいると 思った。

見終えた後で、なんか自分でも色んな“フェイク”を考えたりした。

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以下は、映画内容の関連事項と監督インタビュー。

  

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映画の中で大統領になった「チェイニー副大統領」
408pxrichard_cheney_2005_official_p リチャード・ニクソン政権では、大統領次席法律顧問を務め、ニクソンがウォーターゲート事件により辞任した後は、ジェラルド・フォード政権で史上最年少の アメリカ合衆国大統領首席補佐官となる。フォード落選後は連邦下院議員に当選し、ロナルド・レーガン政権時には共和党下院院内幹事を務める。ジョージ・ ハーバート・ウォーカー・ブッシュ政権では国防長官として湾岸戦争を主導した。

2000年の大統領選挙前にジョージ・ブッシュ(当時テキサス州知事)から副大統領候補を推薦してくれるように依頼され、そのまま自分を推薦して副大統領 となった。アメリカでは致命的な持病を持つ者を大統領に選ぶことは避けられるため、心臓病を持つチェイニーは将来の大統領選出馬意図がない副大統領候補と して話題となった。

2001年、第43代ブッシュ大統領(ジュニア)の副大統領となる。アメリカの企業ハリバートンの経営にも1995年 - 2000年までCEOとして参加していた。ハリバートンは、世界最大の石油掘削機の販売会社であり、湾岸戦争とイラク戦争で巨額な利益を得た。チェイニー はまた、この会社の最大の個人株主でもある。時折心臓発作で入院することもあるが、精力的に活動する。そのため「史上最強の副大統領」とあだ名される一 方、『歴代最悪の副大統領』とも評されている。

アメリカ同時多発テロ以降、ブッシュ政権の強硬な武断政策は、彼の意見が大きく働いているとされる。

映画の中で恒久法化された「米国愛国者法」
2001年9月11日のアメリカ合衆国ニューヨークで起きた世界貿易センタービルでの同時多発テロ後45日間で成立し、米国内外のテロリズムと戦うことを 目的として当局に対して権限を大幅に拡大させた法律である。この法律において電話やEメール、医療情報、金融情報や他の記録について当局に対し調査する権 限を拡大し、米国内において外国人に対する情報収集の制限に対する権限を緩和し、財務省に対し金融資産の移転、とりわけ外国人や外国法人について規制する 権限を強化し、テロに関係する行為をとったと疑われるものに対し司法当局や入管当局に対し入国者を留置・追放する権限を高めることを規定している。さら に、「テロリズム」の定義を拡大し、「国内テロ」を含め、その結果愛国者方は司法当局の拡大された権限を行使する場面が飛躍的に拡大している 。

しかし、この法律は両院とも圧倒的多数の差で成立しているが、当初から市民の自由の保護を弱めるおそれがあるものだとして批判されていた。特に、この方に 反対する者は入国者に対し無期限の留置が可能な権限を与えていること、司法当局によって行われる管理権者の承諾無く行われる家宅捜索「こっそり忍び寄り盗 み見る」調査をできるようにすること、FBIに対して令状なくして電話、メール、金融取引の記録を利用することを拡大すること、図書館の情報や所得情報を 含めて司法当局が調査できるようにしたことなどが批判されている。成立後、いくつかの訴訟がこの法律に対し提起されたが連邦裁判所は少なくとも1つの条項 について違憲との判断を下した。

多くのこの法の規定の見直し条項の期限がおおむね施行後4年後の2005年12月31日であった。期限が近づくと、この法律の支持者は、市民の自由を危う くするとの動きもあったに関らず、見直し条項を恒久化するよう推進した。2005年7月、米国議会上院は相当程度の改正をした恒久化法を可決し、下院は大 部分について存続させる法案を可決させた。両法案に対しては、市民の権利を無視していると批判する一部の両党上院議員から両院協議会で批判があった。協議 会での成案が、上院の修正部分の大部分を削除して、2006年3月2日に議会を通過し、ジョージ・W・ブッシュ大統領により2006年3月9日署名され た。

捜査権拡大に関する16条項のうち14条項が恒久化され、2条項は4年間の延長となった。

映画の中で大統領を暗殺したとされた「シリア」
レバノン元首相暗殺事件 : レバノンの首都ベイルートで2005年2月14日、車爆弾が爆発しハリリ元首相ら23人が死亡した事件。元首相は反シリア派だっ たため、レバノンに軍部隊などを駐留させ実質支配していたシリアの関与が疑われた。国連独立調査委員会は10月20日、シリアとレバノンの治安・情報機関 高官らが関与したとする報告書を安全保障理事会に提出。シリア政府は事件への関与を否定した。

シリアの核疑惑 : シリアが北朝鮮の協力を得て核開発を進めている可能性があると、アメリカのメディアなどが相次いで報じたもの。中東のシリアが北朝鮮など の協力を得て密かに核開発を進めているとの疑惑に対し、IAEA=国際原子力機関が、「そのような情報はない」との公式見解を発表。(2007.9.16 付ニュースより)

国連安保理でのシリア制裁を目指すブッシュ政権(2005年10月19日掲載)
シリアに4項目の要求を突き付けたブッシュ政権(2005年10月17日掲載)
シリアへの「リビア・モデル」適用を目指して動き始めたブッシュ政権(2005年10月3日掲載)

映画の中でもデモが非難していた「イラク戦争」
2004年10月、アメリカが派遣した調査団が「イラクに大量破壊兵器は存在しない」との最終報告を提出。開戦の根拠となった大量破壊兵器の情報の信憑性も薄いものであったことが明らかになり、この戦争の正当性が根底から大きく揺らぐ結果となっている。

◆ケネディ大統領暗殺事件
第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが1963年11月22日(金曜日)現地時間12:30(18:30 UTC)にテキサス州ダラスで暗殺された事件。

暗殺の理由と暗殺者は多くの説があり、いまだに結論が得られていない。その主な原因は、証拠物件の公開が政府によって不自然にも制限されたり、また大規模 な証拠隠滅が行われたと推測できる事象が多くあるためである。例えば、暗殺犯とされたリー・ハーヴェイ・オズワルドは、ダラス市警察本部でジャック・ル ビーに射殺された。この射殺事件にもケネディの暗殺事件の真相の隠蔽行為(口封じ)であるとする意見がある。

これらの不可解な状況が相次いだことにより、「軍産複合体の意を受けた政府主犯説」、「サム・ジアンカーナを中心としたマフィア主犯説」、「フルシチョフ の命を受けたKGB主犯説」、「フィデル・カストロ主犯説」、「ピッグス湾事件の失敗を恨む亡命キューバ人主犯説」、「解任されたことを根に持った元 CIA長官のアレン・ダレス主犯説」、「FBI長官ジョン・エドガー・フーヴァー主犯説」、さらには「大統領の座を狙ったジョンソン主犯説」から「大統領 選挙で負けたニクソン主犯説」など、今日までに多くの仮説が提示されている。全体的にはCIA、FBIを実行部隊にした政府内部の犯行であるとする説が多 い。

有力な一説である「軍産複合体の意を受けた政府主犯説」によると、ケネディの急進的なベトナム戦争撤退計画が軍産複合体の利益を損ねると恐れた政府の中の一部勢力が大統領の警備を弱体化して犯行に及んだとしている。

◆レーガン大統領暗殺未遂事件
1981年3月30日に、ワシントンD.C.でアメリカのロナルド・レーガン大統領(当時)が銃撃された事件。

テキサス工科大学生のジョン・ヒンクリーは、映画「タクシードライバー」を繰り返し見る中で映画の中で売春婦を演じたジョディ・フォスターへの偏執的な憧 れを抱く。フォスターがイェール大学に入学したとき、ヒンクリーはフォスターに近づくためにコネチカット州ニューへブンに転居し、フォスターの自宅のドア の下に自作の詩を書いたメッセージを挟み込んだり、繰り返し電話をかけるなどした。

しかしフォスターとの接触に失敗したヒンクリーは、旅客機をハイジャックし、フォスターの前で自殺して注意を引こうとする計画を考えた。しかし結局ヒンク リーは「歴史上の人物としてフォスターと同等の立場になるため」に大統領の暗殺を企てる。計画実行のためヒンクリーはジミー・カーター大統領を州から州へ と追いかけたが、その結果テネシー州ナッシュヴィルで重火器不法所持の罪で逮捕された。

釈放されたものの無一文になったヒンクリーは家に帰り、神経衰弱となり精神療法を受けたが改善しなかった。その後1981年になると、カーターを選挙で破り新たに大統領となったロナルド・レーガンをつけねらい始めた。

肺炎で死去したレーガンの葬儀は、リンドン・ジョンソン元大統領以来の国葬として、2004年6月11日に行われた。その葬儀の映像が、この映画の中では 「ブッシュ大統領の葬儀」の様子として使われ、チェイニー副大統領が弔辞を述べるシーンもこの時のものが使われたらしい。

 

*上記Wikiより部分抜粋
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映画制作時およびイギリスでの公開時(2006.09.19)にイギリス首相だった「トニー・ブレア」
ブレアはイラク戦争に関しては安易な対米追従路線であったとして批判が多い。任期途中での退陣まで至った背景には、イラク戦争に対する国民からの猛反発があると言われている。任期は、1997年5月2日から2007年6月27日。

 

*上記Wikiより部分抜粋
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◆犬養毅総理暗殺事件(五・一五事件)
五・一五事は1932年(昭和7年)5月15日に起きた日本の大日本帝国海軍急進派の青年将校を中心とする反乱事件。武装した海軍の青年将校たちが首相官 邸に乱入し、当時の護憲運動の旗頭ともいえる犬養毅総理を暗殺した。この事件により日本の政党政治は衰退したといわれる。

事件の翌日に内閣は総辞職し、次の総理には軍人出身の斎藤実が就任した。総選挙で第1党となった政党の党首を総理に推すという慣行が破られ、議会では政友 会が大多数を占めているにもかかわらず、民政党よりの内閣が成立した。大正末期から続いた政党内閣制は衰えが始まったが、まだ議会は機能しており、軍人出 身者が総理についたといっても実態として軍国主義が始まった訳ではない。これ以後は元老(西園寺公望)や重臣会議の推す総理候補に大命が降下し、いわゆる 「挙国一致内閣」が敗戦まで続いた。この時期は武官または軍部出身者が総理になることが多く、終戦までの文官の総理は広田弘毅、近衛文麿と平沼騏一郎だけ である。

この事件後、テロを恐れるあまり政治家たちが反軍的な言動を差し控える風潮が広がった。新聞社は軍政志向への翼賛記事を書き始め、政治家は秘密の私邸を買 い求め、ついには無産政党までが「憎きブルジョワを人民と軍の統一戦線によって打倒する」などと言い始めた。昭和天皇は、続く二・二六事件に衝撃を受け、 自身の政治発言が軍部を刺激することを自覚してしまったといわれる。中国戦線において、参謀本部に事変不拡大の意志を持つ石原莞爾がいるにも関わらず、彼 を後押しをすることが出来なかった。かくして日本は陸軍統制派による軍閥政治への道を歩み出していくことになる。

◆日本のテロ対策特別措置法
平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我 が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年11月2日法律第113号)は、アメリカ同時多発テロ事 件の発生を契機として行われた対テロ作戦を支援するために制定された日本の法律(特別措置法)。

 

*上記Wikiより部分抜粋
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Death_of_a_president_image2_2 ガブリエル・レンジ監督(34) インタビュー
●この作品を撮ったことで、その後のキャリアになにか影響はありましたか?

「トロント映画祭では国際批評家賞もいただきましたし、基本的によい影響しかないと思っていますが……。でもアメリカに行く度に、空港のセキュリティ・ チェックで“小さな部屋に連れて行かれるんじゃないか?”という思いがよぎります(笑)。今のところ、もう1本アメリカで映画を撮る予定になっているの で、そう大きな問題にはなっていないようですが。それでも、ブッシュ家に招かれて“伝記を書いてくれ”と頼まれることもないでしょうね(笑)。」

●果たして、イラク進軍の最高責任者である現役大統領を抹殺したのは誰なのか? また米国大統領を消すことで真の平和は訪れるのか?といった問いが観る者に投げ掛けられる。

●「この企画を思い付いた発端は、米国の主要なメディアのイラク戦争の報道の仕方に疑問を感じたから。米国がイラクをシニカルに報じるとき、一連のテロ問 題に触れるとき、メディアの報道はすごく偏ったものに感じられるのです。報道の在り方から、今回の問題意識が生まれたんです」

●「この企画を思い付いて、脚本家であり共同プロデューサーでもあるサイモン・フィンチと共に、英国のフィルム4に持ち込んだんです。『この企画はすごく 危険だ。でも刺激的で挑戦的でもある。危険が伴うが、それにはちゃんと意味がある。イラクと欧米との6年間を総括したものにもなるだろう』と言われ、すぐ に企画に対してOKが出たんです。米国では、この企画は難しいかったでしょうね。仮につくりたいという米国の監督がいても、資金が集まらなかったでしょ う。僕たちは GOサインが出た後、静かに静かに制作を進めたんです。企画をオープンにして、制作をスムーズに進めるのは難しいと考えたからです。作品完成後に内容を発 表したところ、米国では騒ぎが起きたわけですからね。資金を調達してくれたフィルム4、およびチャンネル4はとても勇気があったと感謝しています」

●「FBIやシークレット・サービスに実際に在籍していた人々が僕らに協力してくれました。彼らは役者と一緒に生活し、いろいろと教えてくれたんです。例 えば、FBIの科学捜査班を経験した人物は、その役の役者と一緒に過ごし、その役者は指紋判定ができる技術まで身に付けたんです。技能テストがあれば、そ の役者は合格するぐらいまで徹底的に役について学んだんです。そうすることで役者たちは自信をもって、自分の役をリアルに演じることができたわけです。台 詞を丸覚えするのではなく、自然と専門用語や知識が口から出てくるようになってもらいました。カメラの前で演技をすると、それはすぐに観る人に伝わりま す。役者には、自分が役者であることを忘れているぐらいに、ごくごく自然に振る舞うことを求めました」

●ガブリエル監督のプロフィールを見ると医学部卒、と書いてある。人命を救う医者の卵から映画監督へ軌道変更したユニークな経緯も気になるところだ。

「ひとつ言えることは、僕が医者にならなかったことで世界はより安全になったということです(笑)。僕は医者ではなく、まずジャーナリストとして働き始め ました。その後、ドキュメンタリー番組を手掛けるようになったんです。ドキュメンタリーをつくった経験が、今の映画監督としての仕事に繋がったと言えるで しょうね。今、僕が一番興味を持っていることは、ドキュメンタリーとフィクションの境界線上にあるものです。ドキュメンタリーの手法を使って、フィクショ ンのドラマとも、ドキュメンタリーとも違う世界をつくることを考えています。ドキュメンタリーの形式を使うことで、観客にリアルな現実を一時的に忘れさ せ、あたかもブッシュは本当に死んだかと思わせるなど現実とは違う映像世界を生み出すことを狙っています」

..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... ..... .....
◆ブッシュを知的に描きすぎたかもしれないということですが、実際にこの映画でブッシュの新たな側面を見たというか、魅力的にさえ思えた部分もありました。これまでいろいろな映画作家がブッシュを描いてきたと思いますが、彼は監督の目にどのような人物に映りましたか?

この映画を作るにあたって、フィンチと一緒に何百時間ものアーカイブ映像を見たし、さまざまな機会にブッシュの映像も撮りに行ったわけだが、それを通して僕が得た感想は驚いたことに、ブッシュにはカリスマ性があるということだった。実際、彼は生で人々に接すると、実に巧みに振舞うんだ。側近からも良い言葉が返ってくるし、決断の速さや信念の固さなどもあって、尊敬されているのが伝わってきた。取材を通して、イメージしていたこととは全く違うものが見えてきたんだ。それには本当に驚かされた。我々がよく目にする10~15秒くらいの映像だと、彼は英語力に問題があったりなどして、どうしても間抜けな印象を受けてしまうわけだが、実際には全く間抜けな人物じゃなかった。政治ジャーナリストやコメンテーターの話を聞いても、ブッシュはそういう間抜けに見える側面を利用しているんじゃないかという意見が出てくる。僕もそれはあり得ると感じた。つまり、カントリー・ボーイだったり、人々に普通の言葉で話しかける普通の男のようなイメージを利用しつつ、民衆に対しても敵に対しても、自分を過小評価させることで、何らかの利を得ているのは確かだと思う。

◆今回の映画は事件を追うことに終始していますが、どうしてそうしたのですか? アメリカという超大国の大統領が暗殺されたということで、世界の反応も描くことは出来たと思いますが、何故そうされなかったのでしょうか?

これは世界に対する影響を想像する映画ではなく、アメリカ国内で暗殺がどういう影響を与えるかということを検証するのが目的だった。イラク戦争および対テロ戦争が、アメリカ国内においてどういう影響を与えたかということを検証した映画だと思っていただければいい。未来を見据える映画というよりも、未来を利用しながらアメリカ国内の現在あるいは過去に起きたことを映しているんだ。

◆タイトルですが、現役の大統領を対象にしながら、何故“the President”ではなく“a President”にしたのですか?

実は、ケネディ暗殺に関してウィリアム・マンチェスターが書いたとても有名な本があって、それのタイトルが「The Death of a President」なんだ。たぶん、それを意識したということはあるね。それに、これはある意味、ブッシュの暗殺についての映画というよりも、ブッシュ政権がアメリカの価値観、特に憲法に対して与えたダメージを表現しているものだ。この映画ではさまざまな問題が提起されているが、ブッシュ政権がテロリズムと戦うという名目でいかに憲法を無視しているかというところに全てはつながっているんだ。

◆社会や政治が問題を抱えているのは世界中どこでも同じだと思いますが、これから映画を観る日本の観客に対して、どのようなことを伝えたいですか?

まず我々は、メディアや配信されているニュースに対して疑念を抱くべきだ。アメリカにおいてはイラクへの侵略に関してなど、さまざまなメディア操作を行うことに現政権は成功したわけだね。嘘をパッケージ化して国民に伝えるためにメディアを利用したし、メディアのほうもそれに加担したという状況がある。戦争に至るまでのステップを疑いをもって検証することを怠ったわけで、政権はそんなメディアを巧みに利用したわけだ。

そうしたメディアのあり方は、アメリカでも日本でもイギリスでも起こり得るわけで、もしも日本の観客に対してメッセージがあるとしたら、それは国際的にも通用すると思う。僕が言いたいのは、まずは伝えられた情報に対して常に疑念を抱き、自分で見極めることが必要だということ、そして現実が歪曲される可能性を意識すべきだということだ。それは、24時間ニュースが流れているような現在の状況の中では特に必要だと思っている。逆に、メディアのほうも出来事を検証せずにそのままたれ流しにしたり、ミスを犯すことももちろんある。リアルタイムにニュースを求めるような人々の貪欲さがプレッシャーとなって、メディアもそれを満たすためにニュースを追いかけ続けるという状況があるのではないかな。ジャーナリズムには常にそういった問題があるわけで、まずはニュースを頭から信用せずに自分の目で見極める努力をすべきだと思うね。

長すぎて申し訳ない(笑)。「全てに疑問を抱いてほしい」と言うだけで良かったのかもしれないけど、それでは十分じゃない気がしたんだ。

Cinema Factory ガブリエル・レンジ監督 インタビュー】一部抜粋

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