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2010年5月15日 (土)

501: グリーン・ゾーン

決死の大量破壊兵器捜索

唯一の手がかりは"偽情報"だった――

グリーン・ゾーン

そこは偽りに支配された安全地帯...

Gz3

pen原題

Green Zone

penスタッフ&キャスト&他

監督・製作: ポール・グリーングラス
製作: ティム・ビーヴァン / エリック・フェルナー / ロイド・レヴィン
製作総指揮: デブラ・ヘイワード / ライザ・チェイシン
原案: ラジーフ・チャンドラセカラン
脚本: ブライアン・ヘルゲランド
撮影: バリー・アクロイド
音楽: ジョン・パウエル

キャスト: マット・デイモン グレッグ・キニア ブレンダン・グリーソン エイミー・ライアン ジェイソン・アイザックス

製作: 2010年 アメリカ
上映時間: 114分

pen概要

イラク中心部のアメリカ軍駐留地域“グリーン・ゾーン”を舞台に、大量破壊兵器の所在を探る極秘任務に就いた男の決死の捜査を描く。銃撃戦などのアクション・シークエンスを手持ちカメラで活写した臨場感あふれる映像は圧巻。 シネマトゥデイ

penレビュー評価

IMDb★★★★★★★☆☆☆ 7.2/10 9,823votes
YAHOO! MOVIES】 The Critics: B/13reviews Yahoo! Users:B- 2,320ratings
YAHOO!JAPAN 映画★★★☆ 3.69点/91人
映画生活★★★☆ 70点/22人

pen感想

遅ればせながら『第9地区』を見るつもりだったけど上映が終了していたので、こちらはDVDになってから見る事にした。で、昨日公開された本作『グリーンゾーン』が面白そうだったので、見てみることにした。

さくらスイッチ 68点 劇場観賞

戦地での緊張感を114分間途切れなく味わうのは、本当に申し訳ないけど正直きつかった(もうちょっと覚悟して、体調万全で見に行くべきだったと少し後悔した)。それに、映像のリアリティが物凄くある反面、話の展開の仕方は(ノンフィクションの原案本がある割に)御都合主義っぽくてリアリティを感じられなかったのが残念だった。

紆余曲折を経てクランクイン&アップされた本作の評価は、批評家の間でも真っ二つに分かれている。そして、政治的批判も受けているようだ。

主役である一兵ロイ・ミラーのように軍律を無視した行動を善しとされたら軍というものは成立しないとはいえ、アメリカ政府やジャーナリズムが信頼に足りていたら、主役である一兵は軍律を無視するような行動を取らなかっただろう。本作を観るとアメリカ政府(ネオコン)やジャーナリズムを強烈に批判したくなる。

主役ロイ・ミラーが抱く不信感は、命を張る任務だけにより切実なものだ。組織で働いていれば、戦地でなくとも任務に対する不審を経験することはあると思う。その不審をどう解決するかは人それぞれだ。ロイ・ミラーのような行動を選択する人は少数だ。多くは不審に思いながらも組織に帰属する。そして、ロイ・ミラー以上に大きな不信感を抱えるのがイラク人フレディだ。国と自己が密接に結びついたアイデンティティを持つ彼の言葉は、深く私の胸に突き刺さった。

日本の自衛隊イラク派遣は昨年(2009年)終了した。自衛隊イラク派遣については、是非も含め、日米同盟や憲法9条を絡めて色々な報道がなされた。本作はアメリカだけでなく、日本に向けられる刃でもある。。。

pen備忘録

Gz7「グリーン・ゾーン」

「グリーン・ゾーン」とは、かつて連合国暫定当局(アメリカ軍を中心としてイラクの政府体制を再建しようとする連合暫定施政当局)があったバグダード市内10km²にわたるエリアのことである。イラク暫定政権下の正式名称は「インターナショナル・ゾーン」ではあるものの、「グリーン・ゾーン」の呼び名が一般的である。

アメリカ国内の政治背景を巡っての“彼ら”の争い

昨日(2010.05.14)のTBSラジオ「キラ☆キラ 3時台コラム」で町山智浩さんが、「FOXニュース」というニュース番組とお笑いニュース番組『デイリー・ショー』の司会者ジョン・スチュワートが揉めているという話をしていた。『グリーンゾーン』を見て連想したので、以下にその一部を書き留めてみた。

アメリカではレーガン政権時代の1987年に、放送メディアや報道メディアの不偏不党の原則が撤廃された。ようするに、新聞やテレビやラジオは特定の宗教や政党に加担して報道してはいけないという決まりが無くなり、加担していいという事になったのだ。そして、レーガン政権のメディア戦略参謀だったロジャー・アイレスを社長として発足したのが「FOXニュース」で、レーガン政権でやっていたメディア操作をひとつのテレビ局で始めようとした。

一番決定的だったのが、ブッシュがイラク攻撃を仕掛けようとした時に、イラクが911テロの黒幕なんだと、イラクは大量破壊兵器を保有しているとブッシュが言ったのに対して(それは証拠が無くてでっち上げだった)、3大ネットワークやCNNは懐疑的だったけど、「FOXニュース」はイラクが大量破壊兵器を持っていると連呼し、世論を作り上げていったことだ。その後大量破壊兵器が無かったことが分かり、それをブッシュが認めた後も、アメリカ人の50%くらいがイラクが大量破壊兵器を持っていると信じ続けたくらい、FOXの世論操作は完璧にいった。「FOXニュース」はCNNを抜いてケーブルテレビ局で視聴率トップになっていた。

イラク戦争がインチキだったとばれて「FOXニュース」は急激に転落していったが、オバマが大統領になってまた「FOXニュース」は立ち直った。黒人が大統領になるのは怖いと思っている白人の人たちの恐怖を煽る形で視聴率を回復していったのだ。「オバマはイスラム教徒だ」などのネガティブキャンペーンを、裏を取らずにこういう噂があります、という形で報道した。

アメリカではニュース戦争のようなことが起きていて、どれが本当だか分からなくなってきている。

全部聴いてみると面白い・・・(18分)↓

米国の記者は個人プレー

ジャーナリズム崩壊』出版で著者の上杉隆が受けたインタビュー記事も思い出したので、以下にその一部を抜粋してみた。

米国の良い面はまず、記者が自分のスタイル、文体で書けるので、読者もファンになりやすい。また、長い記事が書ける自由さもある。米国の新聞記事は、日本の週刊誌の記事に近い。ストレートニュースは、ワイヤーサービス(通信社)の仕事です。

ただ、マイナス面もあります。各記者がバラバラに取材して書くので、日本のチーム取材と違って、情報量をクロスさせることができない。個人主義なので、同僚記者にも一切情報は渡さないという弊害があります。また記者の能力に依存してしまうので、ひどい記者の記事だと、事実誤認の多いとんでもないものも出かねない。そうした点では、日本の集団主義によるチーム取材の良さを感じますね。 ・・・全文を読む

追記: 情報を受け取る側のメディアリテラシーも大切

最近の韓国軍艦沈没事件の報道を見ていると、どうしてもイラク問題を連想してしまう。調査結果なんてどうにでもなる気がしてしまう。となると調査結果の正否よりも、どこの国の調査結果を支持するか、ということになる・・・。

・<2010/5/20 中日新聞社説>
韓国軍艦沈没 北朝鮮の暴走は深刻だ

韓国の哨戒艦が沈没した事件で、韓国は「北朝鮮製魚雷による爆発」という調査結果を発表した。核、ミサイル開発に続く、北朝鮮の深刻な軍事的挑発 であり、いっそう孤立を深めるだけだ。

韓国の哨戒艦「天安」(一、二〇〇トン)が三月下旬、爆発して沈没し乗組員四十六人が死亡、行方不明となった。朝鮮戦争の休戦(一九五三年)以 来、韓国軍の死者数では最大の惨事だ。

韓国調査団は現場から回収した魚雷の部品を分析し、推進体にあったハングル表記などから「北朝鮮の小型潜水艦による攻撃としか説明がつかない」と 結論づけた。調査には米英豪などの専門家も加え約二カ月かけた。韓国側は慎重を期し、即時の軍事的報復を自制したといえよう。

北朝鮮の国防委員会はただちに声明を発表して「でっち上げだ」と否定し、制裁には「全面戦争を含む強硬措置で応える」と述べた。現場海域へ調査団 を派遣する考えも示した。無実だというなら、韓国側の証拠提示に対して具体的に反証すべきだろう。

北朝鮮の犯行だとすれば、暴走の理由は何か。

事件があったのは、黄海上の境界線である北方限界線(NLL)の南側の韓国領海だ。NLL付近は、これまでも双方の艦艇の衝突が起きている「火薬庫」だ。韓国の李明博政権は経済支援を続けた過去の政権とは異なり、「核開発をやめない限り、本格的な支援はしない」という立場だ。昨年十一月には黄海で 南北が交戦し北朝鮮警備艇が大破した。北朝鮮は経済が破綻(はたん)し、金正日総書記の健康不安もある。国民を結束させるため、常に軍事的な緊張が必要とされる。

今回の事件は北朝鮮が韓国に報復して軍事力を誇示する一方で、国内を引き締めるのが狙いではないか。こんな見方が有力だ。

韓国政府は国連安保理に提案し、制裁を求める考えだ。南北の経済交流も大幅に縮小されるだろう。日本と米国は韓国を全面的に支持すると表明した。中国は哨戒艦沈没には明確な態度を示していない。だが、中国は「六カ国協議」の議長国であり、経済協力というテコを使って北朝鮮の軍拡を抑えられる立場にあり、国際社会に責任がある。・・・全文を読む

<2010/5/31 田中 宇(たなか・さかい)
韓国軍艦沈没事件その後 

5月20日、韓国海軍の哨戒艦(コルベット)「天安」が3月に沈没した事件について、韓国と米英豪スウェーデンで構成する「軍民合同調査団」が調査報告書を発表した。調査団は、5月15日に沈没現場の近くで漁船が引き上げたとされる魚雷の残骸を公開し、北朝鮮が発行したとされる魚雷のパンフレットや設計図と、魚雷の残骸が「酷似している」ことから、天安艦は北朝鮮の小型潜水艇が発射したその魚雷によって撃沈されたとの結論を発表した。

この発表を受け、日米韓などのマスコミは「これで北朝鮮の犯行が確定した」と報じた。日本では、ほぼ同じタイミングで鳩山首相が普天間基地の沖縄県外移転をあきらめたので、米国などでは「朝鮮半島が戦争になりそうなので、鳩山は、沖縄の米軍基地の県外移転は無理だとの判断に転じたようだ」という分析が出ている。

北朝鮮政府の国防委員会は5月28日、平壌で記者会見を開き「北朝鮮は天安艦を攻撃していない。米韓の調査報告は作り話だ」と発表した。北の国防委員会は金正日が委員長で、北朝鮮で最も強い権力を持つ。この委員会が記者会見をするのは珍しい。記者会見は、平壌に駐在する各国の報道機関と外交官が招待され、全編が国営テレビで実況中継された。5月30日には、平壌で10万人の市民を動員した韓国非難の集会が開かれた。

他の国々の政府が、自国に対する疑いをこれだけ強く否定すれば、世界のマスコミに「韓国の方が捏造しているのかも」という論調が出るだろう。だが、北朝鮮は札付きの風変わりな独裁国家なので、日米では「また北は、おかしなやり方でウソをついている」という報道が主流だ。「金正日は、息子の金正雲に後継したいので、北の国内を結束させようと、天安艦を撃沈した」といった「解説」も流布している。

とはいえ、韓米英豪の調査報告に対して疑問を呈しているのは北朝鮮だけではない。ロシアの外務省は5月27日に「北朝鮮が天安艦を撃沈したのだと100%考えられる証拠が出てこない限り、この件で国連が北朝鮮を制裁することにロシアは賛成できない」と発表した。ロシアはその前日、ソウルに専門家団を派遣し、韓国政府や在韓米軍に接触する独自調査を開始した。ロシアは、米英韓の調査報告に納得していない。

▽米英豪だから正しいと思うのは危険

「北朝鮮が天安艦を撃沈させた」と米英豪韓が言い切ったのに対し、中露が疑問を発し、北朝鮮は強く否定した。「誰の発言か」だけに注目すると、日本のような冷戦型の対米従属の国是に固執する国の当局やマスコミ(学界、評論家など)は「米英豪韓が正しいに決まっている」という論調になり「中露朝の肩を持つのは、非国民(左翼)か敵のスパイか隠れ朝鮮人だけだ」という話になる。

米英が今後もずっとダントツに強い覇権国であり続けるなら、このような「無条件降伏」を経た後に「鬼畜米英」を単にひっくり返したような日本人のあり方で良い。むしろ難しく考えない方が、覇権国に対する直裁的かつ自滅的な反逆を繰り返す可能性がなくなるので得策かもしれない。

だがもし、米国が北朝鮮に対してやっていることが濡れ衣戦略だとしたら、イランに核武装の濡れ衣をかけて潰そうとしているうちに、国連(NPT)でイランではなくイスラエルの核武装の方が問題にされているように、覇権を振り回しすぎて(意図的に)自滅する米国の隠れ多極主義につき合いすぎることは、日本にとって危険なことになる。愛国的な日本人は、こっそりで良いから、本当に韓米英豪の調査報告が万全かどうか、いちど疑ってみた方が良い。

そのような観点で、韓米英豪などが5月20日に発表した調査報告を見ると(困ったことに)かなり粗悪なものであることがわかる。まず形式的なことから書くと、あの調査報告書は「名無しのごんべ」である。誰の署名も入っていないし、そもそも各国の調査団のメンバーすら発表されていない。

米英豪というアングロサクソンは、強力な公文書を作るとき、筆者の署名をつける。閣僚、軍司令官、議員、貴族(英国)などが、自分の名前の権威を賭けてその文書の正しさを主張すべく署名する(イニシャル署名だと権威が落ちる)。もし調査を行った韓米英豪などの人々の名前がずらりと署名されていたら、報告書の権威は高まった。だが実際には、署名がないだけでなく、調査団の名簿も発表されていない。無署名の報告書は、米英が「信憑性を疑ってください」と言っているようなものだ。

▽韓国政府を濡れ衣発表に誘導した米国

全体として「北朝鮮の潜水艦が撃沈犯なのだが、その証拠をうまく米韓側が示せていない」という可能性もないわけではない。だが、天安艦の沈没当時、米韓軍事演習が行われ、米韓軍が北の潜水艦の潜入を察知できなかったとは考えにくいことや、米韓がこの件でまだ隠し事を続けている感じがぬぐえないことから考えて、やはり天安艦の沈没は、米韓の誤射による同士討ちの可能性が高いと私には思える。(米海兵隊の潜水部隊が、北との戦争を煽るため、意図的に天安艦に爆弾をセットしたとの説も出てきたが、信憑性は不明だ)

5月20日の合同調査団が北朝鮮犯人説を発表して以来、韓国と北朝鮮の対立が激化し、開戦一歩手前の状況になった観がある。しかしよく見ると、たとえば北朝鮮が韓国勢を追い出したとされる開城の工業団地では、追い出されたのは韓国政府の事務所の要員だけだ。開城で事業を展開している韓国企業の幹部や技術者はその後も毎日38度線を超えて開城に通勤しているし、開城市内からも北朝鮮の4万人の従業員が毎日通勤し、工場を稼働させている。「南北経済交流の象徴だった開城の工業団地はもう終わりだ」というイメージが喧伝されているが、実際には、開城の韓国企業はほとんど通常どおり操業している。

天安艦が米韓同士討ちで沈没したと考える場合、その後の展開を主導しているのは韓国政府ではなく米国(米軍)である。韓国政府は、事件後の1カ月あまり対応を迷っていた。天安艦沈没の濡れ衣を着せたら北朝鮮は激怒して戦争になりかねず、韓国にとって危険すぎる賭けだ。しかし韓国政府は、同士討ちを発表することもできなかった。

同士討ちの韓国側の当事者である天安艦は大々的に報じられているが、米国側(第3のブイ?)の存在は未確定だ。米韓軍事同盟は、米国の方が上位だ。韓国政府が同士討ちを発表したら、米国は怒り、米韓同盟は解体する。韓国政府は、北朝鮮に濡れ衣を着せるか、事件の原因を発表しないままでおくしか選択肢がなかった。だが、これだけ大騒ぎになり、韓国の右派が活気づいてしまうと、韓国政府が原因を特定しないわけにはいかなかった。韓国政府は、6月2日の地方選挙というタイムリミットの2週間前に、北朝鮮に濡れ衣を着せる発表をした。米国は、韓国政府が自ら北に濡れ衣を着せる発表をするのを待っていた。

米軍の艦船が沈み、米兵に死者が出たことを、米政府が隠しておけるはずがないと考える人が米国にもいるが、米軍の情報管理力は、日韓政府よりずっと強い(逆に日韓の政府は、情報管理力を意図的に弱いままにしておくことで、自国を対米従属から出られないように自ら縛っている)。

米国の潜水艦や特殊部隊は、世界各地で秘密作戦を展開しており、死者を出す事態が時々起きるはずだが、それらの一部でも報道されたら、作戦対象(敵)に勘づかれ、作戦そのものが失敗する。潜水艦が沈んだり、特殊部隊員がたくさん死んでも、米軍はマスコミも巻き込み、それが報じられない態勢を作っていると考えるのが自然だ(そんなことないよと言って笑う米国の研究者が、実は米軍の諜報機能の一部だったりする)。

▽イラン問題と似てきた

米軍や米政府は、全体として情報管理能力が高いくせに、今回の天安艦事件の調査報告書のような、ずさんなことをやる。この手の奇妙な稚拙さは、イラク戦争やアフガン戦争、911事件の捜査、グアンタナモ収容所、イラン核問題などで、連続的に発揮されている(最近では共和党のカール・ローブが「オバマのカトリーナになる」と分析したメキシコ湾のBPの原油流出事件が、これに加わりつつある)。

諜報や外交の部分的な失敗はどこの国でもあるが、911以来の米国の大失敗の連続は、米国の覇権を根幹から崩壊させており、私には単なる過失と考えられない。この失敗の結果、世界の覇権構造が多極化している。そのため、米国の中枢には自国を意図的に失敗させて世界を多極化したい勢力(隠れ多極主義者。ネオコンなど)がいると、私は推察してきた。

隠れ多極主義者の常套策は、米国の覇権を恒久的に維持したい軍産複合体やイスラエルに近づき「テロ戦争」に代表される冷戦型の「米国中心の同盟体と、敵国との恒久的な対立状態」を作り出す戦略を手がけ、それを稚拙かつ過剰にやって失敗させ、逆に米国の敵国や非米的な諸大国(BRIC)を強化し、世界を多極化させることだ。

北朝鮮犯人説が濡れ衣であるとすると、今回の天安艦事件は、この隠れ多極主義の作戦の枠組みに当てはまる。イランの核兵器開発と同様、米英と同盟国(イラン問題ではイスラエル、天安艦問題では日韓)の方が実は間違っているのだが、英米が動かしている世界のマスコミは、北朝鮮やイランが極悪だと喧伝する。しかしそのうちに、実は米英の方が間違っているということを、途上諸国や新興諸国の人々が気づき、欧米の世論も揺らぐ。国連など国際社会では、米英の方が間違っているという見方が強まり、その線に沿って中露が仲裁をかけようとするが、米国は拒否する。人類の善悪観を操作して覇権を維持する、大英帝国以来の戦略が崩壊していく。

その時点で、米国の同盟国は、とことん米国に追随して、善悪が逆転する新世界秩序の中で悪者になることに甘んじるか、米国から同盟関係を切られることを覚悟で、非米側に方向転換するしかない(日本はこれ以外に「政治鎖国する」「いないふりをする」という手があるので危機感が薄い)。

先行する中東問題では、すでに英国の政界が米国との同盟関係の持続に疑問を持っている。イスラエルは、米国との同盟を切ったらイスラム諸国から攻撃を仕掛けられ国家崩壊に瀕するので、窮している。米英に楯突いたのに優勢なイランは、長らく米英から抑圧されてきた中東イスラム諸国の人々に喝采されている。

▽隠れ多極主義に引っぱり出される金正日

中東では善悪が逆転しつつあるが、東アジアで現体制の北朝鮮が他の国々から賞賛されることはない。日韓も米国に支配されているが、石油があるのに貧しいままの中東イスラム諸国と対照的に、日韓は米国の支配下で高度成長を経験して豊かになったので、米国支配への不満がわりと少ない(韓国では南北分断を米国の責任と考える人が多いが)。

北朝鮮の金正日政権は、近くの日韓や中国にとっては、今後もやっかいな存在だろうが、遠くのイランやベネズエラなどの反米諸国からは、米国の覇権に楯突いて勝てる国として賞賛され、非米反米諸国が強くなる国際社会で、金正日らが従来より積極的に発言するようになりそうだ。その一つの兆候が、5月28日の北朝鮮の国防委員会の前代未聞の記者会見だったと見ることができる。イランのアハマディネジャド大統領は最近、金正日をイラン訪問に招待した。ベネズエラのチャベス大統領は、以前から北朝鮮の「主体思想」を、自国の「ボリバル主義」と同様の素晴らしいものと礼賛している。

筋金入りの反米指導者は世界的に少ないので、アハマディネジャドやチャベス、それから彼らを扇動する米国の隠れ多極主義者にとって、天安艦事件を契機に金正日が立ち上がって吼え出すのは大歓迎だ。従来、金正日はアジアの指導者らしく実利的で、国際社会で英雄になることより、自国の経済発展(自政権の儲け)を重視し、反米主義を叫ぶのも、米朝国交正常化を目的とした動きであり、チャベスやアハマディネジャドの英雄的反米主義とは一線を画していた。しかし今後は、米国が誘発した天安艦事件の濡れ衣が、世界における金正日の位置を変えていくことになるかもしれない。

日韓の政官界では、北朝鮮を敵視している限り、米国との同盟関係が安泰だと考える傾向が強いが、米国の隠れ多極主義的な意図をよく観察しないと、イスラエルのようにいつの間にか米国にはしごを外された挙げ句、国際的な悪者にされかねない。注意が必要だ。・・・全文を読む

 

 

How Did We Get It So Wrong?

Gz2

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